食べること
私は食べることが好きだ。
と、ずっと思っていた。
でも、つい最近になって、
ほんとに食べること好きか?と思うようになった。
それは、
”うつ状態”と診断される状態になって、
食欲が出なくて、
食事をしようなんて思えない日々と、
義務感のみを理由にして食事をする日々が、
いくらか続いたから。
うつの症状として、食欲が出なくなるというのは知っていた。
でも、知ってると思ってたのは、
今思えばとんでもない思い違いだった。
食欲が出ないって、ほんとに文字通り、食欲が出ないんだ。
こういう状態を、食欲が出ない、っていうんだ。
そう思うくらい、初めての感覚だった。
今日はあんまりいっぱい食べる気分じゃないな~、とか、
べつに食べなくてもいっか、とか、
そういう”食欲がない”とは、レベルが違う。
レベルというか、
次元が、世界が、違う。
うつがひどいときの食欲のなさは、
きっと、気分とかだけでは説明できない。
食べなきゃ動けなくなる、だからちょっとでも食べなきゃと、
理解はしてる。
それでも、動こうと思っても、体が動かない。
冷蔵庫まで歩いて行って、
ゼリーを取ってきて、
ついでにスプーンもとって、
シロップがこぼれないように慎重に蓋を開けて、
スプーンで掬って、
食べる。
その一つ一つの動作さえ苦しい。
しんどくてできない。
そこまでしなきゃいけないなら、
食べなくていい。食べたいと思わない。
そういう日々を、なんとか騙し騙し切り抜けた。
そして気づけば、義務感だけで食事をする生活になっていた。
食べないと、次に食事をする体力が出ない。
お風呂に入る体力も出ない。
郵便物を確認しに行く体力も出ない。
通院する体力と気力なんて出るわけない。
先生は嫌いだけど、
幸いにも薬は多少効いてる実感があるから、
病院は行かなきゃ。
そのためには、何か少しでも食べなきゃ。
そうしてなんとか1日に2食くらいは食べるようになった。
(そこに至るまで、食べるためにお金を使うことへの罪悪感との闘いがあったりもした。)
そこからしばらくして1日3食食べれる日が数日間あったけど、
最近はまた1日2食に戻っている。
そして、食べている間は、何かをしないと気が済まない。
ただ食べる、というのが難しい。
YouTubr見たりテレビ見たりゲームしたりネットサーフィンしたり、
”食べる”というのは食物を口に運ぶ作業のようなものになっていて、
とにかく作業のほかに何かしないと気がすまない。
その作業が面倒で苦痛なことでしかないから。
気づけば、
食べるのが好きな私は、
すっかりどこかへ行ってしまっていた。
もともと、
日々の食事よりも甘いものを食べるのが好きだった、というのはあるけど、
それにしても、食べることを苦痛な作業だと感じたことはなかった。
これは、抑うつ症状の表れだろうか。
それとも、今まで気づいてなかっただけで、
日々の食事は私にとって苦痛なものだったんだろうか。
そんなこと考えても、苦しくなるだけかもしれない。
自分の心を見つめすぎるのはかえってよくないとも聞く。
でも、
もし、
美味しくて幸せを感じるあの瞬間が
毎日訪れるような生活が送れるようになるなら、
そうなれたらいい。
いつになるか、そもそもそんな生活可能なのか、
まったく分からないけど…